ホーム 「ほめ写」コラム Vol.13 子どもの自己肯定感が低い原因は?親子で一緒に自己肯定感を高める方法

Homesya project Vol.13 子どもの自己肯定感が低い原因は?
親子で一緒に自己肯定感を高める方法

監修・解説:発達心理学者 岩立京子

2021/03/31

今回のコラムでは、子どもの自己肯定感に親がどのように関わっているのかについて、詳しく解説していきます。さらに「ほめ写」をすることで、子どもだけでなく、親の自己肯定感も向上することがわかりました。親子で一緒に自己肯定感を高めることができる「ほめ写」をご家族で楽しむ前に、是非ご一読ください。

目次

その「子育ての悩み」には、親の自己肯定感が関係しているかも?

子育てをしていて、次のような悩みはありませんか?

  • 子どもに「〇〇しなさい!」「早く!」と命令ばかりしてしまう
  • 子どもと会話が少ない、コミュニケーションが上手に取れない
  • 子どもが頑張っていても評価できない、厳しくしてしまう
  • 子どもが自分の想像通りにできないと、怒ってしまったり、落ち込んだりしてしまう

これらの子育ての悩みや、子育てに感じるストレスは、もしかしたら親の自己肯定感の低さが影響しているのかもしれません。

「自己肯定感」とは、無条件にありのままの自分を受け入れて、自信や安心を得られる感覚のことです。
親は、自己肯定感が低い状態だと心に余裕がなく、つい子どもの言動にイライラしてしまったり、自分に対する厳しい評価を子どもへも投影してしまったり、自分の理想や考えを押し付けてしまったりすることがあります。

このように、親の自己肯定感が子育てに影響することはイメージできるかと思いますが、最近の研究で、親の自己肯定感が子どもの自己肯定感にまで影響していることがわかっています。次のトピックスで詳しく見ていきましょう。

子どもの自己肯定感が低い?それは親の自己肯定感が影響しているかも!?

自己肯定感は、自らの価値や存在意義を肯定できることです。つまり様々な困難を乗り越える力を身に付ける上での土台となります。その土台があることで、他人を信頼したり、思いやったり、協力し合うことができるようになります。
では、子どもの自己肯定感が低いとどうなってしまうのでしょう。またその原因は「親の自己肯定感」が関係しているかもしれない、ということも紹介していきます。

子どもの自己肯定感は高い?低いとどうなる?

子どもは、自己肯定感を自分ひとりで身に付けていくことはできません。乳幼児期に、無条件に愛されて受け入れられる体験を通して自己肯定感は芽生え、その後生涯にわたってさまざまな経験や人間関係の中で育まれていきます。
自己肯定感は、子どもの成長や人格形成にとても重要な感情です。

例えば自己肯定感が低い子どもは、「自分にはできない」と感じることが多く、何事にもがんばるエネルギーが不足してしまう傾向があります。そのため、すぐに物事を諦めてしまったり、挑戦することをしなくなってしまうことで、ますます自己肯定感が低くなってしまいます。
一方、自己肯定感が高い子どもは、「自分はできる」と感じていることが多く、様々なことに挑戦をし、失敗をしても諦めず、工夫をして乗り越えていくパワーがあります。さらにそのような何かを乗り越えた経験を通して、より自己肯定感を高めていきます。

次に自己肯定感の高い子どもと、低い子どもの特徴をまとめました。自分の子どもの自己肯定感はどうなのか、あてはまる特徴がないかチェックしてみてください。

自己肯定感が高い子どもの特徴:いきいきとしている・積極的に挑戦できる・簡単に諦めない・人の成功を一緒に喜ぶことができる・積極的に友だちと関わる / 自己肯定感が低い子どもの特徴:活気がない・挑戦しない・すぐに諦める・自分の意見を言わない・リードするのが得意な友達についていく

子どもの自己肯定感は親の言動の影響を受けやすい

子どもは、「親が自分をどう見ているのか」という判断基準から、自分自身の価値を決めていく傾向があると考えられています。
例えば親に「あなたは〇〇ができない」と言われれば、子どもは「自分は〇〇ができない」という思いを強くし、「あなたは〇〇が上手だね」と言われれば、子どもは「自分は〇〇が上手にできる」という思いが強くなります。このように、子どもは成長過程で親から受ける言動に大きく影響を受けていきます。

例えば、自己肯定感の低い子どもの親は、他の子と比較して、「他の子はできてるのに、何でできないの?」等、わが子に良くない評価をしたり、頭ごなしに「ダメ」「やめなさい」等、子どもの主張を否定してしまうことが多いという特徴が見られます。
こうした親の言動は、子どもの自己肯定感を低くしてしまう要因と考えられます。
また、自己肯定感の低い子どもに見られる特徴として、「親自身の自己肯定感が低い」ということも挙げられます。それについては次項で詳しく見ていきましょう。

親の自己肯定感が低いと子どもも低くなる?

親と子どもの自己肯定感の関係を調査したところ、これには相関関係があることが分りました。親の自己肯定感が低いほど、その子どもの自己肯定感も低くなる傾向があり、反対に親の自己肯定感が高いほど、子どもの自己肯定感も高くなる傾向が見られました。

実際に、子育てに悩む親の中には、悩みの原因を紐解いていくと「親の自己肯定感の低さ」に行きつくというケースが見受けられます。
子どもに対して、自分自身の低い自己肯定感からくるネガティブな思いを抱いてしまい、自分の子どもを肯定的に捉えることができなくなってしまうのです。
特に自己概念が未熟で親と過ごす時間の長い幼少期の子どもは、親の不安やストレスなどの影響を受けやすく、子どもも不安やストレスを感じやすくなります。さらに、自分のことを肯定的に見てもらえない環境では、「自分は大切な存在」「自分は理解してもらえている」などという実感を得ることができず、自己肯定感が育ちにくくなります。

あなたは大丈夫?親子で自己肯定感をチェックしてみよう:
自己肯定感チェック

コロナ禍での生活の変化で親はイライラ?子どももストレスを感じている

新型コロナウイルス感染拡大により、私たちの生活は大きく変化しました。2020年春には、幼稚園や小学校の休園・休校があったり、在宅勤務や外出自粛が続きました。現在でもコロナ前に比べて、自宅で家族と一緒に過ごす時間が長くなっていると思います。家庭内での家族の関わり合いでどのような変化があったでしょうか?

オンライン保険相談サービス「ほけんROOM」が未就学児を持つ468人を対象に、2020年5月に実施した「自粛期間中の未就学児の子育てに関する意識調査」によると、7割以上の親が「自粛前に比べて、子育てが大変になった」、6割以上が「親が自粛期間中に子どもを叱る回数が増えている」と回答しています。
「子どもが家でおとなしくできるわけもなく、どうしても怒ってしまう」、「子どもがうるさくてイライラしてしまう」などという方が多いのではないでしょうか。

自粛期間中の未就学児の子育てに関する意識調査

ほけんROOM「自粛期間中の未就学児の子育てに関する意識調査」(2020年5月実施)

調査概要:自粛期間中の未就学児の子育てに関する意識調査
■調査日程:2020年5月16日〜2020年5月18日
■調査方法:ほけんROOM公式インスタグラム
■調査日程:20歳以上の未就学児を持つ親
■調査日程:468名

ほけんROOM

しかし、家族で過ごす時間が増えたことは悪いことばかりではありません。過ごす時間が増えたからこそ、子どもを「ほめる」機会を意識的に増やしていきませんか?次に紹介する「ほめ写」は、子どもをほめることで、子どもだけでなく親も一緒に自己肯定感を高める方法です。

「ほめ写」は、子どもと親が一緒に自己肯定感を高める方法

ほめ写プロジェクトの調査・研究から、「ほめ写」は子どもの自己肯定感はもちろん、親の自己肯定感も向上させることがわかりました。
親と子の自己肯定感の関係や、親子のコミュニケーションの実態等を調べ、さらに「ほめ写」を3週間実践することで、でどのような変化が起こるのかを調べる「ほめ写」実証実験を行いました。

「ほめ写」によって効果的に子どもをほめることができる!?

子どもの自己肯定感を高めるには、「ほめる」ことが重要です。
子どもは、ほめられることで「自分のことを認めてくれた」と感じ、自信が持てるようになります。すると、他人に対して思いやりを持てるようになったり、もっとがんばりたい、と思うことができるようになったりします。これが「自己肯定感」が育つということです。

「ほめ写」は、子どもが写った写真プリントを使って、子どもを「ほめて」あげることです。
まずは子どもの頑張っている姿や何か成し遂げたとき、その他、何気ない日常を撮影し、心に留まった写真を選びます。写真は子どもと一緒に選んでも良いでしょう。一緒に写真を選びながら「この時はがんばったね」「●●ちゃん生まれてきてくれてありがとう、ってママは心の中で言ったの」など、その時嬉しかったことや楽しかったことを伝えたり、子どもをほめたり、認めたりしてあげましょう。

その後は、家庭の中で子どもがよく目にする場所にその写真プリントを飾ってください。
子どもは飾られた写真を見るたびに「自分は愛されている」「存在価値を認められている」という肯定的な感情を抱き、それを毎日繰り返し目にすることで、その感情が確かなものとなっていくでしょう。また、写真を飾る時は、「この時は●●だったね」など親子の会話も増え、より自然に子どもをほめることができるようになります。

Step01 写真を撮る・選ぶ Step02 飾る Step03 ほめる

STEP1 “撮る”
子どもが楽しそうにしている、活躍している、頑張っている時の写真や、家族といっしょのシーンなど、家族の愛情を感じる写真を撮りましょう。
STEP2 “飾る”
リビングや子ども部屋など、子どもが日常的によく過ごす場所に、子どもの目線に合わせた高さに飾りましょう。
STEP3 “ほめる”
写真を見ながら「この時はがんばったね」 「よくできたね」と努力や成果をほめましょう。また、「生まれてきてくれてありがとう」「あなたは宝物」「大好きだよ」など、子どもの存在そのものを肯定する言葉も大切なほめ言葉です。

「ほめ写」で親子とも自己肯定感が向上した

ほめ写プロジェクトでは、2018年の発足以来、写真と自己肯定感の関連性を調査してきました。2018年、2019年の2回の調査・研究から次のようなことがわかりました。

子どもは、ほめられた写真を家庭で繰り返し見て、話すことで、ポジティブな自己イメージを強めることができ、自己肯定感が向上していきます。
また、親は「ほめ写」を通して、子どもと積極的にコミュニケーションを取るようになった結果、子育てに対する効力感(子育てをしっかりできている感覚)が高まり、親自身の自己肯定感も向上したと考えられます。

詳しくはこちら

東京家政大学子ども学部 子ども支援学科 教授  岩立京子先生の解説

自己肯定感は、ほめられることで伸びていきます。人にほめられると、ほめられる自分、成功する自分に出会っていくので、自己概念や自尊心、自信が育まれ、自分で考え、 判断し行動できる力につながっていきます。ほめることは、その時その場で子どもによい影響を与えますが、子どもの自己肯定感の芽生えを培い、将来の前向きな人格特性を育むことにつながっていくのです。このことから、ほめること、ほめ写をすることは一般に考えられている以上のよい効果があります。

コロナの影響で、自宅で家族と一緒に過ごす時間が増えていますが、家族であっても四六時中顔を合わせていると息が詰まってしまいます。しかし自分を見失いがちなコロナ禍の中にあってこそ、家族との心地よい関係性が重要です。
「ほめ写」を通して家族が楽しかった思い出、心地よかった経験などを思い出し、共有し、新たな発見をしたりポジティブなコミュニケーションをすることで、子どもだけでなく、家族全員が自分の存在を肯定し、家族の絆をより確かに築いていけるのではないでしょうか。子供への愛情や子どもの存在を見直すきっかけにもなるでしょう。

コロナ禍において、私たちを取り巻く環境は大きく変わり、大人も子どもも不安やストレスを感じながら生活しています。withコロナ、afterコロナなどといわれる先の見えない未来をたくましく生きていくためには、「自己肯定感」が自分を支える強い味方となるでしょう。

「ほめ写」をすることで、親も子どもも心地よく関わり、自己肯定感を向上させていきましょう。子どもや家族の大切さをあらためて感じられるはずです。是非「ほめ写」をエンジョイしてください。

■ほめ写をやってみよう:「ほめ写」のやり方
「ほめ写プロジェクト」オンライン発表会の様子

監修者

  • 発達心理学者 
    岩立京子
    東京家政大学子ども学部
    子ども支援学科 教授

    発達心理学者 岩立京子氏

    東京学芸大学教育学部、大学院修士課程を経て、筑波大学大学院博士課程心理学研究科心理学専攻に進学。平成5年に博士(心理学)を取得。専門分野は幼児教育、発達心理学。筑波大学大学院博士課程修了後、筑波大学心理学系技官を経て、東京学芸大学幼児教育科で30年、その後2020年4月より東京家政大学子ども学部子ども支援学科にて、一貫して幼児教育の専門家養成に従事している。 また、日本乳幼児教育学会常任理事、全日本私立幼稚園連合会幼児教育研究機構理事を務め、文部科学省の調査研究協力者会議の委員などを歴任するとともに、NHKのEテレ「すくすく子育て」、雑誌等において子育ての助言を行っている。

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