子どもの自己肯定感が低いと
どうなる?
教育評論家が解説
監修・解説:教育評論家 親野智可等
2021/03/05
監修・解説:教育評論家 親野智可等
「自己肯定感」という言葉をご存知ですか?近年子育てや教育の場だけでなく、ビジネスシーンでも注目されています。
自己肯定感は子どもたちの成長や、大人になってからも重要な“心の土台”のようなものです。
今回のコラムでは、自己肯定感とはどのようなものか、自己肯定感が低いとどうなるのか、
低くなる原因などを解説していきます。
まずは自己肯定感について学んでいきましょう。自己肯定感の重要性がわかるはずです。
目次
自己肯定感は「自信のもと」
「自己肯定感」とは、文字通り「自己を肯定する(認める)感覚」のことで、「頭がいいから」や「容姿が優れているから」「経済力があるから」などの能力や条件などに関係なく、良くないことも含めて無条件に「自分という存在そのもの」を受け入れることです。
具体的には、次のように思えることです。
このような自己肯定感は、自分の可能性を信じる基礎となり、人との関わりを通して自分が周りの人に役立っていることや、周りの人の存在の大きさを知るための基礎にもなります。
自己肯定感が低いと生きづらさを
感じてしまうことも
自己肯定感が高ければ、自分に自信を持ち、何事にも積極的に取り組んでいける前向きさや社会性を持つことができます。しかし自己肯定感が低いと何をするにおいても自信を持つことができず、さまざまな問題にぶつかりやすかったり、生きづらさを感じたりしてしまいます。
例えば次のようなことはありませんか?
程度の差はあれ誰しもにこのようなことはあるはずですが、これらに当てはまりながら“生きづらさ”を感じているのであれば、それは自己肯定感が低いことが原因かもしれません。
まずは、あなたの自己肯定感の傾向をチェックしてみましょう。
自己肯定感をチェックしてみよう:
自己肯定感チェック
自己肯定感が低い人の特徴
自己肯定感の低さは、次のようなネガティブな思考や行動につながることがわかっています。
これらは全く異なる行動に見えますが、すべて低い自己肯定感を満たそうとする動機によるものです。
また、自己肯定感が低い子どもは、自分に自信が持てないことで内向的でおとなしいと思われがちですが、中には低い自己肯定感を満たそうと過度に強い承認欲求を持っていたり、友だちに対する嫉妬心から大人の見ていないところで意地悪をするような問題行動につながることがあります。他にも、授業の理解度が低かったり、友だちと上手に関係を築けない、学校の遅刻や欠席が多くなるなどの問題行動につながることもあります。
自己肯定感が低くなる原因
自己肯定感の高さは、これまでの経験や人間関係によるものといわれています。
特に、子ども時代のつらい体験は、私たちの自己肯定感に想像以上に強い影響を与えます。
例えばテストで80点を取った子どもがいます。ある子どもは親に「すごいね!よく頑張ったね!」とほめられ、ある子どもは「どうして80点しか取れなかったの?」と残念がられたとします。このふたりの自己肯定感は、どちらが高くなるでしょうか?
また、テストで100点を取らないとほめられることがない子どもの自己肯定感は、どのようなものになるか想像してみましょう。
子ども時代の失敗体験やがっかりした体験は、「自分はできない」というトラウマとなったり、ほめられる経験が少ないことで、「自分は大切な人間だ」という思いが育たなかったりし、これらの積み重ねが自己肯定感を低くする要因になると考えられています。
また、家事を手伝ったことや、テストで100点を取ったことなど、何らかの条件付きでしか認められてこなかった場合には、誰かの役に立ったり、何かを達成したときにしか自己を肯定できなくなり、「誰かの役に立たない、目標を達成できない自分は無価値だ」と感じて、条件付きの自己肯定感しか持てないケースもあります。
このように、自己肯定感は幼少期から育まれていくものです。そのため、この時期に、子どもが接する機会が多い保護者や教師が「どのような言葉をかけるか」「どのように育てるか」ということが自己肯定感の形成に大きく影響するといわれています。
また、日本人特有の「真面目さ」や「謙虚さ」が、自己肯定感を下げる要因と見る向きもあります。
あなたの子どもは大丈夫?
日本人の若者は自己肯定感が低い
日本人は自己肯定感が低い傾向にあるといわれています。しかし自己肯定感を持つことは、大人だけでなく子どもにとっても非常に重要なことだということを、教育評論家の親野先生の解説で紹介していきます。
日本の若者の自己肯定感は
他国と比べて低い
〈コラムVol.1〉でも紹介しましたが、世界的に見て日本人の若者の自己肯定感は、依然として「低い」という調査結果が出ています。
内閣府が発表した2019年版「子ども・若者白書(※)」によると、日本の若者が「自分自身に満足している」と答えたのが45.1%、「自分には長所があると感じている」が62.2%でした。韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンの回答と比較すると、日本は最も低い結果となっています。また、これらの数字は、2013年度の調査から更に低下しており、日本人の若者たちの自己肯定感の低下が進んでいることがわかります。(※調査対象は2018年11~12月、満13~29歳までの男女に実施)
この調査によると、半数以上の若者が「自分に満足していない」自己肯定感が低い若者ということになります。
前述したように、自己肯定感は子どもの頃からの経験の積み重ねで培われます。
そのため、子どもの自己肯定感を高めることは、現在の教育現場において重要な課題となっています。
自己肯定感をチェックしてみよう:
自己肯定感チェック
自己肯定感とはいわば「心の土台」です。
心の土台となる自己肯定感がしっかりある子どもは、
チャレンジ精神がある
打たれ強い
思いやりがある
などの特長があり、幸福度が高くて伸びる子になっていくと考えられています。
自己肯定感は、子どもがどのような人生を歩んでいくとしても、生きていく上で重要な基盤となります。
子どもは、子ども自身だけでは自分がどんな人間なのか、ということがわかりません。
だから周囲の大人たちが子どもを認めてあげたり、ほめてあげたりすることで、「自分はできる」、「自分は必要とされている」、「自分は愛されている」という自己肯定感を育てていくのです。
成長過程の子どもにとって、自己肯定感を持つことが大切だということはいうまでもありません。
子どもの自己肯定感を育てるために、
「写真」を使った「ほめ写」がおすすめ!
子どもの自己肯定感を向上させる子育て習慣に「写真」を使って取り組みませんか?
写真を飾ってほめることで、子どもの自己肯定感を向上させる「ほめ写」について紹介します。
子どもの自己肯定感UPのために、
子どもをほめよう!
子どもの自己肯定感を育むためには、子どもに「自分は認められている」ということ、「自分は愛されている」ということを日常的に伝える必要があります。そのためには『ほめる』という行為が非常に有効です。
「ほめる」には、「条件つきでほめる」と「無条件にほめる」の2種類があります。
「条件つきでほめる」は、子どもが頑張った時や何かができるようになった時に、その結果をほめたり、いっしょに喜んであげること。
「無条件にほめる」とは、努力や成果など特別な何かに対してではなく、「生まれてきてくれてありがとう」「あなたがいてくれて幸せ」と、子どもの存在そのものをほめてあげることです。
写真を使って子どもをほめる
「ほめ写」をしよう!
子どもをほめた方が良い、といわれてもどうしたらよいかわからないという方も多いのではないでしょうか。実際、子どもを日常的にたくさんほめることは、意外と難しいものです。
そこで、写真を使ってほめる「ほめ写」を提案します。
プリントした写真を飾って子どもと一緒に見ることで、より簡単により効果的にほめることができるようになります。
子どもは、飾られた写真を見るたびに、ほめられた体験を反芻(はんすう)することができます。また家族みんなで笑顔で映った写真を日常的に目にすることで、「自分は家族に愛されている」という実感を持つことになるでしょう。
このようにほめられる経験を積み重ねていくことで、子どもの自己肯定感が育まれ、何事にも積極的に前向きに立ち向かっていけるようになったり、他人を思いやる気持ちが育まれていったりすることが期待できます。
「ほめ写」は大人の自己肯定感もUP!
「ほめ写プロジェクト」の2018年、2019年の2回の調査・研究により、「ほめ写」が子どもの自己肯定感向上に効果を上げるだけでなく、親の自己肯定感の向上にも寄与することがわかりました。これは、「ほめ写」で積極的にコミュニケーションを取るようになったことが、子育てに対する効力感を高めた結果だと考えられます。
また親の自己肯定感と子どもの自己肯定感には相関が見られ、親の意識・行動の変化や自己肯定感の向上が、子どもの自己肯定感に良い影響を与えることが考えられます。
ほめ写をやってみよう:「ほめ写」のやり方
監修者
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教育評論家 親野智可等氏
本名 杉山 桂一。長年の教師経験をもとにメールマガジン「親力(おやりょく)で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いと評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。ブログ「親力講座」も月間PV20万超。『「叱らない」しつけ』(PHP文庫)などベストセラー多数。現在、全国各地の小・中・高校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。