ホーム 「ほめ写」コラム Vol.14 小学生になると自己肯定感が下がる!? 子どもの自己肯定感を高める子育てとは?

Homesya project Vol.14 小学生になると自己肯定感が下がる!?
子どもの自己肯定感を高める子育てとは?

監修・解説:教育評論家 親野智可等

2021/03/31

子どもの成長には、心の土台となる「自己肯定感」をしっかりと持っていることが重要です。
しかし、ほめ写プロジェクトの調査から、子どもの自己肯定感は、小学校に進学を機に、低下する傾向があることがわかりました。
子どもには、自信を持って、たくさん友だちを作ったり、色々なことに積極的にチャレンジしたりして欲しいですよね。
そこで、今回のコラムでは、小学生の子どもが自己肯定感を高く持つために親ができること、について紹介していきます。

目次

子どもは小学生になると自己肯定感が下がるのはどうしてか、また自己肯定感が下がるのを防ぐにはどうしたらよいのか、親野先生の解説で見ていきましょう。

小学生になると自己肯定感が下がる

東京家政大学子ども学部 子ども支援学科 教授  岩立京子先生の解説

ほめ写プロジェクトが実施した意識調査から、子どもの自己肯定感は、小学校低学年から低下する傾向にあることがわかりました。

幼児期の子どもは、まだ自分自身を評価することができませんが、小学校に入学する頃から、自分の能力や性格を、他者との比較を通して評価するようになります。人と比べて「走るのが遅い」「字が上手にかけない」など、成長とともに自分自身と友だちとを比較するようになっていきます。その結果、自信をなくしたり、劣等感を抱いたりするようになり、これが自己肯定感の低下につながる可能性があると考えられます。

自己肯定感が低い子どもは、自分に自信が持てないため、トラブルや困難に出会っても立ち向かうエネルギーが湧いてこないことがあります。そのため、勉強や人間関係でつまずきやすくなってしまいます。

東京家政大学子ども学部 子ども支援学科 教授  岩立京子先生の解説

“子どもの自己肯定感”には、親の言葉が影響しやすい!

親は子どもに対して、「どうして○○できないの?」、「まだ○○やってないの?」、「みんなに置いていかれちゃうよ」、「先生に怒られちゃうよ」などといったネガティブな表現を無意識に使ってしまいがちです。親としては、子どもが小学校で困らないように、と心配する親心から、かけてしまう言葉ですが、子どもはこのようなネガティブな言葉をかけ続けられることで、「私はできない」という思いが強くなり、自己肯定感が低下してしまいます。

「親の言葉」は子どもの自己肯定感に強い影響を与えます。そのため、子どもが自己肯定感を高い状態で維持できるように、ネガティブな言葉には注意してください。 「○○ができたね」とできている部分を見つけ出してほめたり、例えば、支度が遅い時や、宿題になかなか取りかからない時などは「一緒に○○しよう」「手伝ってあげるからやってみよう」等、子どもが着手するハードルを下げて、行動を促すような言葉づかいを心がけましょう。 自己肯定感が高い子どもは、「私は(僕は)できそうだ、できる」と自信を持つことで、初めて体験する学校での勉強や、新しい友だちとの関係も「楽しそう!やってみたい!」と前向きに思うことができます。

子育てで大切なのは“子どもの自己肯定感”を親が意識的に高めること

子どもの自己肯定感を高めるために、親ができる対策は、親から子どもへ「ほめる」言葉をかけてあげることです。これまでわざわざ口に出していなかったようなことも、是非言葉にしてほめてあげてください。

特に気を付けたいのは、保育園や幼稚園から小学校へ環境が大きく変わり、子どもがつまずきやすい時期である小学校1年生です。自信を持って新しい環境へ飛び込めるように、是非入学前に、保育園や幼稚園で頑張ったことやできるようになったこと、成長したことを、親子で一緒に再確認する機会を設けてください。子どもは自分自身の成長を感じることが、自信となり、自己肯定感の向上につながります。 特に、身体が大きく成長したこと、靴や洋服のサイズが変わったことなどは、目に見える成長であるため実感しやすいことです。

また、小学校に入学以降は、子どもはテストや競争など「勝ち負け」で評価される機会が増えていきます。そこでは、ありのままの自分らしさや、自分の良さを見てもらえる機会は減っていきます。子どもの存在そのものを肯定するような言葉がけも意識的にしてあげてください。「あなたがいてくれてうれしい」「あなたのことが大好き」「あなたはパパとママの宝物」など、その子の存在を無条件に肯定する言葉は、子どもの自己肯定感向上に非常に効果があります。

小学校入学を機に出てきた悩みと自己肯定感-ほめ写体験者の事例

小学校入学を機に、出てきた子どもの問題をどのように解消してきたのか、子どもの問題と自己肯定感に関して、「ほめ写」体験者の事例を2例紹介します。子どもにどのようなことが起きたのか、親はどのように対応したのか、是非参考にしてみてください。

急に子どもの自信とやる気がなくなってしまった。Aさんの場合

Aさんの子どもは、コロナ禍の2020年に小学校へ入学しました。保育園では体を動かすのが大好きで、自信に満ち溢れて勉強に対する意欲も上々だったのに、小学校に入学した途端にやる気を失ってしまったそうです。

子どものクラスでは、本来であれば運筆の練習の後にひらがなを習うはずだったのですが、コロナ禍の休校の影響で授業ペースはスピードアップされ、いきなりひらがなの練習から始まりました。Aさんの子どもは、「書く」ことにまだ慣れていなかったため、自信を失ってしまったようです。帰宅すると「宿題をやりたくない」「学校に行きたくない」と言うようになりました。

この事態に対しAさんは、学校から帰った子どもを「学校で頑張っているから、家ではのんびりさせてあげよう」、「宿題はやりたくないならやらなくてもいい」と対応しました。また、宿題を頑張っている時や、テストで100点を採った際にはその姿を写真に撮って、プリントして飾るようにしました。 その結果、子どもが1年生を終える頃になると、宿題や勉強への意欲を高め、「学校から帰宅したら宿題をやってから遊ぶ」、というリズムができ、小学校生活にも馴染んできたそうです。

Aさんは、頭ごなしに「宿題をやりなさい」と言うのではなく、子どもの様子を良く観察し、子どもの気持ちや意見を受け入れたことで、子どもは「自分は親に理解されている」という親への信頼感が育ち、自己肯定感を取り戻すことができたのだと考えられます。また、宿題を頑張っている姿や100点を採った時の写真を日常的に目にすることで、「できた経験、ほめられた経験」を反芻し、自分に自信を持つことができるようになり、これも自己肯定感の向上につながったのだと考えられます。

登校班での通学が不安。Bさんの場合

Bさんは、小学校へ入学した子どもが、登校班での通学を嫌がるため、毎朝子どもに付き添って通学していました。「いつまで付き添いを続けなければいけないのだろう」と不安にかられていましたが、夏休み直前のある日「こうなったら6年間付き添いをしよう!」と心に決めました。すると、不思議なことにその翌日、子どもに「もう付き添ってくれなくて大丈夫」だと言われたそうです。Bさんは、自分の意識が変わったことで子どもも変わったのではないか、と感じたそうです。その後Bさんの子どもは、問題なく登校班で通学できるようになりました。

Bさんは、子どもに関する問題は、本をたくさん読んだり、学校(担任をはじめ先生方、スクールカウンセラー)や、友人などに相談や協力を仰ぐなど、とことん子どもの問題と向き合うよう心がけたそうです。さらに「外の世界で何があっても、家の中が安心できれば頑張れる」という考えをもち、「ほめ写」を取り入れました。子どもに家族の愛情や安心を感じてもらえるように、目につきやすい場所に家族写真を飾り、すぐ手に取れる場所にアルバムを置いていたそうです。実際にBさんの子どもは、家族写真を「幸せの証だ」と眺め、アルバムも頻繁に見ているそうです。

家族写真を飾ることや、アルバムを頻繁に見ることができる環境を作ることで、子どもは両親や祖父母、兄弟らの家族に囲まれた写真を繰り返し見るようになり、「家族に愛されている」と感じ、「自分には価値がある」と思いを強めることができます。さらに、アルバムで過去の自分の写真を見ることで自身の成長を実感することにもなり、結果として、自己肯定感の向上につながっていくと考えらえられます。Bさんの子どもも写真を通して、家族の愛情や自分の成長を感じることで、自己肯定感を高め、登校班での通学への不安を払拭できたのではないかと思います。

簡単“ほめ写”で子どもの自己肯定感を高めよう!

スマートフォンの中に、子どもの写真がいっぱい保存されていませんか?
子どもが何かに頑張っていたり、熱中している姿や、家族や兄弟が笑顔で写っている写真で「ほめ写」をしましょう。
「ほめ写」は、「写真を飾ってほめるだけ」のシンプルな方法ですが、子どもの自己肯定感の向上に効果があります。
是非、「これは!」という写真はプリントアウトして飾ってください。玄関やリビング、階段、子どもが自然と目につくところが良いでしょう。

自粛期間中の未就学児の子育てに関する意識調査

写真を飾ったら、子どもと一緒に写真を見ながら思い出話をしたり、「このときはがんばったね」など「ほめる」言葉をかけましょう。すると、子どもは飾られた写真を見るたびに、ほめられた体験を繰り返すことができます。 また家族みんなが笑顔で映った写真を日常的に目にすることで感じる、「自分は家族に愛されている」という実感は、子どもの自信につながります。

このように「ほめ写」は、「ほめる」ことが効果的に働き、子どもの自己肯定感を育んでいきます。
是非、ご家族で「ほめ写」をエンジョイしてください。

「ほめ写」のやり方
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監修者

  • 教育評論家 親野智可等

    教育評論家 親野智可等氏

    本名 杉山 桂一。長年の教師経験をもとにメールマガジン「親力(おやりょく)で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いと評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。ブログ「親力講座」も月間PV20万超。『「叱らない」しつけ』(PHP文庫)などベストセラー多数。現在、全国各地の小・中・高校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。

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