ホーム 「ほめ写」コラム Vol.4 写真の力を使って、子どもの自己肯定感を伸ばす「ほめ写」。その効果とは?

Homesya project Vol.4 写真の力を使って、
子どもの自己肯定感を伸ばす「ほめ写」。
その効果とは?

監修:親野智可等・篠原菊紀・岩立京子

2018/10/01

写真の力を使って、子どもの自己肯定感を伸ばす「ほめ写」。
子どもの自己肯定感を育むためには「ほめる」ことが大事。でも、忙しい毎日のなか、
ほめ続けるのはなかなか難しいですよね。
「ほめ写」は、子どもが頑張っている姿や家族の写真をプリントして、家に飾りながらコミュニケーションを取ることで、親が子どものことを大切に思っているという気持ちを、目に見えるカタチで伝えていく試みです。

「ほめ写」は、実証実験を通して、体験した子どもは、体験していない子どもに比べて、肯定的なイメージを持って、自分の写真を見ている可能性があることが分かりました。
そして、その写真を子どもの目に付きやすい場所に飾り、日頃から繰り返し見ることで、子どもの自己肯定感が伸びる可能性があると示唆されました。

では、「ほめ写」の調査と実証実験についてご紹介します!

目次

ほめ写と自己肯定感の関連性、
その効果を実証!

1.自己肯定感に関する意識調査

写真を飾っている家庭の子どもは、自己肯定感が高い。

まず実態を把握するために、幼稚園から小学生の子ども(4~12歳)と、その親600組に対し、アンケート調査を実施。

写真を飾っている家庭の子は、写真を飾っていない家庭の子よりも、自己肯定感が高い結果が出ました。写真を飾ることが自己肯定感の高低差に関係があることが分かります。

2.「ほめ写」実験

「ほめ写」体験後に自己肯定感スコアが全般的にアップ

次に、普段は写真を飾っていない32組のご家庭で、3週間「ほめ写」を体験してもらい、その前後の意識や行動の変化について回答いただきました。

ほめ写実験後は、実験前に比べて、子ども自身の自己肯定感に関するスコアが全般的にアップする結果になりました。特に「自分自身への満足」に大きな変化が見られました。

3.「ほめ写」の脳活動測定実験

「ほめ写」体験した子どもは、自分の写真を見た時に心地良さを感じている。

さらに、前述の実験で「ほめ写」を体験した小学生16名と、体験していない小学生8名の脳活動を測定し、比較してみました。

【脳活動測定方法】

まず一つ目に、2の自己肯定感アンケート※で自己肯定感のスコアが高かった子どもほど、自分の写真を見たときに「腹内側前頭前野」という「心地良い」と感じる脳の部位が活性化していることがわかりました。自分の写真を見ることで、自分自身をイメージして心地良くなり、自己肯定感が高い状態になると考えられます。

※自己肯定感アンケート:4つの選択肢から選ぶ意識調査アンケート(全14問 計56点満点)

※Ch 44の活性度(t値):Ch44の酸素化ヘモグロビンの濃度変化の平均値(t値)

続いて、「ほめ写」を体験した子どもと体験していない子どもで、自分の写真を見たときの腹内側前頭前野の活性度を比較したところ、体験した子どもの方が、この部位が活性化していました。

「ほめ写」体験した子どもは、自分の写真を興味を持ってしっかり見ている。

さらに「ほめ写」を体験した子どもは体験していない子どもに比べて、興味を持って自分の写真を見ていることが分かりました。
体験者した子どもの方が、前頭葉の右側付近が活性化していました。ここは「空間認知的ワーキングメモリ」に関する部位です。
「空間認知的ワーキングメモリ」とは脳のメモ帳と言われており、脳に入ってきた情報を脳内にメモ書きして、自分の持っている記憶や情報と統合したり、整理する働きがあります。
つまり、「ほめ写」体験した子どもは、自分の記憶をイメージしながら、自分の写真を興味を持ってしっかり見ている、ということが言えます。

※ch21の活性度(t値):ch21の酸素化ヘモグロビンの濃度変化の平均値(t値)

これらの結果から、「ほめ写」によって、自分の写真を見たときに、心地よさを感じて、
肯定的な自己イメージを結びつけられるようになると考えられます。
その写真を子どもの目に付きやすい場所に飾り、日頃から繰り返し見ることで、子どもの自己肯定感が伸びる可能性があると示唆されました。

「ほめることが自己肯定感を高めること」と頭ではわかっていても、日々慌ただしく生活するなかで、実践して、継続するのは正直難しいですよね?
でも、大丈夫!無理に意識をしなくても、普段の生活のなかに「ほめ写」を取り入れれば、子どもの存在をほめるきっかけにもなるでしょう。
特別なことをしなくても、写真をきっかけに子どもとコミュニケーションを取れるし、
その写真を飾っておくことで、子どもは繰り返し見ることができ、自己肯定感が育まれていきます。

監修:
親野智可等(おやの ちから)/ 教育評論家
篠原菊紀 / 公立諏訪東京理科大学教授(応用健康科学、脳科学)
岩立京子 / 東京学芸大学総合教育科学系 教授

監修者

  • 教育評論家 親野智可等

    教育評論家 親野智可等氏

    本名 杉山 桂一。長年の教師経験をもとにメールマガジン「親力(おやりょく)で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いと評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。ブログ「親力講座」も月間PV20万超。『「叱らない」しつけ』(PHP文庫)などベストセラー多数。現在、全国各地の小・中・高校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。

  • 応用健康科学、脳科学 
    篠原菊紀
    公立諏訪東京理科大学 教授

    応用健康科学、脳科学 篠原菊紀氏

    東京大学、同大学院修了。共通教育センター・工学部情報応用学科(知能、医用、健康、センシング)教授、大学院工学マネジメント研究科教授。確率的条件と快感のかかわり、ギャンブル障害、中高年の脳トレ、子どもの教育方法などについて研究している。過去に写真療法、デジタル情報と紙情報の差についての実験を行っている。著書に「すぐにやる脳」に変わる37の習慣 」(KADOKAWA)、「子どもが勉強好きになる子育て」(フォレスト出版)、他多数。フジテレビ「とくダネ!」など多数のテレビ番組等で解説や監修を行っている。

  • 発達心理学者 
    岩立京子
    東京家政大学子ども学部
    子ども支援学科 教授

    発達心理学者 岩立京子氏

    東京学芸大学教育学部、大学院修士課程を経て、筑波大学大学院博士課程心理学研究科心理学専攻に進学。平成5年に博士(心理学)を取得。専門分野は幼児教育、発達心理学。筑波大学大学院博士課程修了後、筑波大学心理学系技官を経て、東京学芸大学幼児教育科で30年、その後2020年4月より東京家政大学子ども学部子ども支援学科にて、一貫して幼児教育の専門家養成に従事している。 また、日本乳幼児教育学会常任理事、全日本私立幼稚園連合会幼児教育研究機構理事を務め、文部科学省の調査研究協力者会議の委員などを歴任するとともに、NHKのEテレ「すくすく子育て」、雑誌等において子育ての助言を行っている。

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